名前の由来
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U


「お兄ちゃんが? お母さんでも、パパでもなくて?」
お母さんはうなずく。

 お兄ちゃん。
 私より二つ年上で、パパゆずりの黒髪のお兄ちゃん。

 ……私が5歳のときの火事で、パパと一緒に死んじゃった、お兄ちゃん。

 正直に言うと、その頃の記憶はほとんど無い。 外で遊んでばかりいた私と正反対に、家でよく本を読んでいたイメージが強く残っている。 でも、時々パパと一緒に外で遊んでいたような。 顔も、髪型も、声もおぼろげにしか覚えてないけれど、それでも大切な私の家族。

 お母さんは、話す。
「お兄ちゃんはね、実は双子で生まれてきたの」
「えっ」
私は驚いて声を上げた。
 双子?そんな話、いままで一度も聞いたこと無かった。 双子って事は、もう片方のお兄ちゃん(お姉ちゃん?)はいったいどうしたんだろう。
「お兄ちゃんたちが生まれてきたときは、お母さんね、それはビックリしたのよ。 お腹もあまり大きくならなかったし、まさか双子だなんて思わなかったの。 でも、それもそのはずだったのよ」

 お母さんは一息おいた。口元は微笑んでいるのに、とてもさびしそうな悲しそうな眼をして。
「片方の子供はね、片方は……すごくすごく小っちゃくて、手のひらくらいの大きさしかなかった。 生まれたときには、心臓はもう……動いてなかったの」

「それでもね。それでも、小さいほうの子供も男の子だっていうことが分かって……。眼も、口も、鼻も、指だってちゃんとあるのよ。 今だから言えるけど、辛かった。とてもとても辛くて、パパの前で自分を責めたのよ。あの子達を悲しい目に遭わせたのは自分だって」

 なにも言えなかった。なんて言えばいいのか、分からなかった。

 生まれてきた赤ちゃんがもう死んでいる。母親としてできることを、してあげられなかった。 お母さんのそのときの苦しみは、私にもちょっとだけ分かったから。
 お母さんは、少し赤くなった目頭を触って、話を続ける。

「元気に生まれてきてくれたお兄ちゃんの方は、生まれてからも、とても元気に育ってくれた。 私のかわりにパパが面倒を見てくれることもあって……。子育てで辛いことも沢山あったけど、それでもなんとかあの子を育てられた。
そして、リオン。あなたがお腹の中にいることが、一年と少し経って分かったのよ」




 
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