Jaune Brillant
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V


  僕は、一枚の絵を描いている。
大きなカンバスに、二人の人間。一人は金髪に金の瞳の女性、もう一人は黒髪に黒い瞳の男。 描き始めたのは一年前、彼女と出会ってひと月が経った日だ。そして完成時期は、未定。

「また描いてるの?あなた」
後ろでエミリアの声がする。
彼女は僕のことを”あなた”と呼ぶようになった。
僕はもうマクベインではない。

姓は、セフィリア。


僕は腰掛けたまま、エミリアの方を振り返る。 カツン、と首から提げた十字架のネックレスが絵にあたった。 エミリアは苦笑する。
「もう、だから服の中にしまって描いたらって言ってるのに」
「君だって、ネックレスしたまま料理するじゃないか。そのうちネックレスもろとも焦がしちゃうよ」

笑いながら冗談を返す。 彼女の料理はちっとも上手くならない。相変わらず消し炭の練成だけは上手だ。 だから、あながち冗談でもないのだが。

「今に上手くなってみせるわ。いつか出来る子どもに、お母さんの手料理食べさせてあげるの」
「楽しみにしてるよ」
エミリアと、僕のネックレスが揺れる。

いつかは、僕たちの間にも子どもができる。 それまで、この絵は完成する事は、ない。

”家族”と名づけた肖像画に、僕はこれからも、筆を入れていく。


 
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